たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること―。バリ島の寺院で、ブエノスアイレスの郊外で、冬の金沢で。旅のなかで思索をめぐらせた、トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。
【書誌情報】
出版社:筑摩書房
発行:2022年9月
版型:文庫版、256p
【目次】
1 内なる海、内なる空(なにもできなくても
○(エン)=縁なるもの ほか)
2 クロスする感性―米国滞在記+α 二〇〇七‐二〇〇八(開くこと、閉じること
競争と幸せ ほか)
3 記憶の淵から(父と蛇
母が人質になったこと ほか)
4 傷のある風景(傷を愛せるか)
【著者】宮地 尚子(みやじ・なおこ)
一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻・教授。精神科医師、医学博士。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。1989年から1992年、ハーバード大学医学部社会医学教室に客員研究員として留学。主な著書に『トラウマ』(岩波新書)、『トラウマ医療人類学』(みすず書房)がある。
*版元HPより