戦後生まれで初の芥川賞作家となった中上健次(一九四六―九二)。「戦後」と「現代」の狭間を生きた中上は、高度経済成長のもとで(再)開発によって失われゆく路地を執拗に描き続けた。その作品群は変革とレジスタンスへのたゆまぬ意志で満ち溢れている。類まれな想像力で仮設された虚構の時空への、最良の道案内。
目 次
はじめに
第1章 同人雑誌から商業作家へ
1 文芸部と同人雑誌
2 詩人中上健次
3 少年小説、自伝的小説
4 佐藤春夫と中上健次
5 見えない地図を描き出す
第2章 戦後生まれの「戦後文学」
1 「戦後」を描く
2 「狂気」という「正気」
3 戦争は終わっていない
4 路地の家族物語
5 「戦後」をめぐる想像力を拡張する
6 交通と変容の動的な空間
第3章 (反)物語/差別論と「ことの葉」の記憶の旅
1 紀州熊野の半島へ
2 司馬遼太郎と中上健次
3 街道の被差別部落
4 「思想の劇」
5 (反)物語/差別論
6 ことの葉(言の葉・事の葉)の記憶の旅へ
第4章 路地の親族関係とクィア家族
1 路地の「民族誌」
2 非規範的でクィアな親族関係
3 レヴィ=ストロースと中上健次
4 交換・ジェンダー・天皇
5 「葺き籠り」の性治論
6 近親姦・近親婚
7 非規範的な親密関係を開く
第5章 路地というコモンズ
1 路地のビジョン
2 路地というゾミア
3 「インディアン」と路地
4 共有地と「公共性」
5 裏山の御堂
6 路地の「治癒神」
第6章 「仮設」と雑草、路地跡の希望
1 隙間的な時間と空間
2 「仮設」と雑草
3 樹木と雑草、草の葉とことの葉
4 雑草的な群れの「力」
5 熊野と不知火
6 生き延びるための物語
7 負の男らしさ
8 雑草の火、希望の火
第7章 「女物語」と「メロドラマ的想像力」
1 物語批判から「メロドラマ的想像力」へ
2 国民的記憶と『鳳仙花』
3 「美徳」への反逆
4 シスターフッドとその分断
5 中上健次と梁石日
6 「同化」と「排除」の彼方へ
第8章 異族たちの世界と「アジア」
1 世界・「アジア」・路地
2 無限のエコー、吉増剛造と中上健次
3 未完の遺作
4 「天皇小説」と「体制翼賛型少数者」
5 「アジア的想像力」と未聞の言語
第9章 生類たちの世界、「内戦」の「戦後文学」
1 喪の言葉
2 路地の魔術的リアリズム
3 縁起の世界
4 「武人」と治癒神、植物と光
5 喰う喰われる魚たち
6 路地の戦争
参照文献
中上健次略年表
あとがき
*版元HPより