




コンテクストデザインとは
コンテクストデザインとは、それに触れた一人ひとりからそれぞれの「ものがたり」が生まれるような「ものづくり」の取り組みや現象を指す。換言するならば、読み手の主体的な関わりと多義的な解釈が表出することを、書き手が意図した創作活動だ。
もともと現代的なデザインは産業革命以降の大量生産・大量消費を背景に成長してきた。それは、特定の使い手を一意に想定し、特定の問題を解決するためのものだ。
デザインはふつう、正しい使い手に、正しい使い方で、正しい価値を提供することを目的とする。明確に言語化された比較可能な価値を定め選んでもらう。たとえば数百の「赤」がそろっている口紅、高解像度のカメラを備えたスマートフォン、加工が綺麗な写真アプリ……。これらはマーケットの要請に応えるために必要だ。でもこのような条件を前提としないデザイン活動があってもいい。価値そのものの定義が使い手の側に委ねられているデザインがあってもいい。
コンテクストデザインは、完成されたものの使用による意図通りの価値提供を目的としない。むしろ未完成のものの使用によって、意図した価値提供を超え、デザイナーの想像の先へとものがたりを波及させることを目的とする。
出版:Takram
クリエイティブディレクション・編集アドバイザリー:吉田知哉(森岡書店/CONCENT)
イラストレーション・デザイン:太田真紀(Takram)
写真:鈴木陽介
ブックデザイン・編集:長田年伸
編集協力:西條剛史(Takram)、ヤギワタル
校正:藤吉賢(Takram)
校正協力:石田康平、道木ジェイミー ローレンス
【著者】渡邉康太郎(わたなべ・こうたろう)
コンテクストデザイナー/Takramマネージングパートナー。慶応大学SFC特別招聘教授。個人の小さな「ものがたり」が生まれる「ものづくり」=コンテクストデザインの活動。趣味は茶道、お酒、香水。J-WAVE TAKRAM RADIOナビゲーター。Twitter @waternavy
*発行元HPより