



家族を撮り続けることは 自分への問いかけ
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』の監督ヤン ヨンヒによる書き下ろしエッセイ
人々はヤン ヨンヒについて「自分の家族の話をいつまで煮詰めているのだ。まだ搾り取るつもりか」と後ろ指をさすかもしれません。 しかし私ならヤン ヨンヒにこう言います。「これからもさらに煮詰め、搾り取ってください」と。
ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。
――映画監督 パク・チャヌク
(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』)
【書誌情報】
出版社:クオン
発行:2023年4月
版型:四六判並製並製、256p
【目次】
はじめに
1.普通の人たち
猪飼野の女たち
アメリカ人、日本人、朝鮮人
「親しかでけへんで」
食卓を挟んで
最後の家族旅行
「大きな写真機」を持って
「おばあちゃん、おじいちゃん、ありがとうございます」
父の古希祝い
残酷な質問
ウリ ヨンヒ チャッカジ
2.カメラを切って
ソナの微笑み
小川の水、くねくねとどこへ行く
「この人は私のコモです」
ギターを弾く新しい母
必死の電話
最後の挨拶
毎日ちゃんと食べて、少しでも笑う
父の隣に添い寝して
3.すべての行為は祈り
記憶の糸を手繰り寄せるように
細胞に染み込んだ歌
母、二〇歳
もう一人の主人公
鶏スープを分けて食べる
コノ兄の死
母の証言
忠誠の歌
七〇年ぶりの済州島
肖像画を下ろした日
送れない手紙
祈るオモニ
【著者】ヤン・ヨンヒ
大阪出身のコリアン2世。
米国ニューヨークのニュースクール大学大学院メディア・スタディーズ修士号取得。高校教師、劇団活動、ラジオパーソナリティー等を経て、1995年より国内およびアジア各国を取材し報道番組やTVドキュメンタリーを制作。
父親を主人公に自身の家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005)は、ベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞、サンダンス映画祭・審査員特別賞ほか、各国の映画祭で多数受賞し、日本と韓国で劇場公開。
自身の姪の成長を描いた『愛しきソナ』(2009)は、ベルリン国際映画祭、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭ほか多くの招待を受け、日本と韓国で劇場公開。
脚本・監督を担当した初の劇映画『かぞくのくに』(2012)はベルリン国際映画祭・国際アートシアター連盟賞ほか海外映画祭で多数受賞。さらに、ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位、読売文学賞戯曲・シナリオ賞等、国内でも多くの賞に輝いた。
かたくなに祖国を信じ続けてきた母親が心の奥底にしまっていた記憶と新たな家族の存在を描いた『スープとイデオロギー』(2021)では毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、DMZドキュメンタリー映画祭ホワイトグース賞、ソウル独立映画祭(2021)実行委員会特別賞、「2022年の女性映画人賞」監督賞、パリKINOTAYO現代日本映画祭(2022)グランプリなどを受賞した。
2022年3月にはこれまでの創作活動が高く評価され、第1回韓国芸術映画館協会アワード大賞を受賞。
著書にノンフィクション『兄 かぞくのくに』(小学館、2012)、小説『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA、2018)ほか。
本書のハングル版『카메라를 끄고 씁니다』は2022年に韓国のマウムサンチェクより刊行された。
*版元HPより