わたしたちは、写真やSNSを使って何かを記録する。美しい景色、充実した日常、素敵だったあの日。でも、そうやって必死にスマホ越しに記録した光景たちは、なんだかすごく頼りないものなんじゃないかと、この頃感じることがある。
なにかを思い出そうとするのに、どうしてこんなことばかり頭に浮かんでくるのだろう。いなくなった誰かや、失われてたなにかに触れたくて思いを巡らせる。けれど、肝心な時に脳裏に浮かんでくるのは、あんなにもたくさん記録した特別な出来事や劇的な瞬間ではない。ありふれていて、ほとんど意味のない事柄ばかりだ。
なにもかも記録に残せる時代。記録には残らないけれど、記憶には残っている。そんな断片的で、どこにでもあるような物事たちを集めたらどんなに愛おしいだろう。部屋の窓から外を眺めながらぼうっと考えていた。polaris ISSUE01のテーマは「記憶と記録」。わたしたちは、世界中に散らばっている記憶の断片を探しに旅に出る。
001 25 メートルを息継ぎなしで泳ぐような
002 遺跡と記憶
003 遺跡と生きる、旅に出る:吉川舞/カンボジア コンポントム Napura-Works
004 手にするための記憶、手放すための記録:菊地知也/写真家
005 アメ横と魚屋の記憶:大橋摩州/アメ横 呑める魚屋魚草店主
006 The Memory of the Dream
007 あなたの記憶
008 ママたちの肖像
009 世界が消えないように:TAAC タカイアキフミ/劇作家
010 ロンドンの囚人のレコード:Judah Armani/ロンドン In House Records
Title:記憶と記録
Pages: over 104
Size: B5
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polarisは「時代から取り残されたもの」をテーマにしたトラベル・マガジンです。断片的で、時代遅れで、一見何の意味もなさそう。旅の途中で出会う、そうした名もなき物事に潜む物語(ナラティヴ)を、ひとつずつ丁寧に掬い上げます。今回のテーマは『記憶と記録』。モロッコの砂漠、アメ横の魚屋、カンボジアの遺跡、ディズニーランドの駐車場、ロンドンの刑務所。記録には残らないけれど記憶には残っている、そんな「記憶」をめぐる旅の物語。