




金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子の作品を、クィア批評や批評理論を縦横に組み合わせて読み解く。読者のアイデンティティをも揺さぶる「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。
【書誌情報】
出版社:青弓社
発行:2023年1月
版型:四六判上製、288p
【目次】
はじめに
第1章 金井美恵子「兎」――クィアとしての語り
1 危うい近親相姦願望
2 肉食と殺害に惑溺する少女
3 過剰な模倣のゆくえ
4 「少女」の物語から「私」の物語へ
第2章 村上春樹『ノルウェイの森』――語り/騙りの力
1 男同士の絆と女同士の絆
2 31と13
3 語る/騙る女
4 語られた/騙られた死
5 女性の欲望を読み直す
第3章 村上春樹「レキシントンの幽霊」――可能性としてのエイズ文学
1 不可解な孤独
2 眠りのあとで
3 パーティーに参加しない「僕」
4 記録と距離
第4章 村上春樹「七番目の男」――トラウマを語る男
1 「K」と「私」
2 男性性(ルビ:マスキュリニティ)の呪縛
3 「波」の出来事
4 トラウマの語り
5 「私たち」のセラピー的空間
第5章 田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」――ケアの倫理と読むことの倫理
1 ケアの倫理という思考方法
2 潜在化するニーズ
3 女性障害者の困難
4 ケアの倫理と読みの倫理
第6章 松浦理英子『犬身』――クィア、もしくは偽物の犬
1 ケアされる/ケアする犬
2 犬という伴侶種
3 被傷性とケアの倫理
4 クィアな身体
5 不穏なる暴力の気配
第7章 多和田葉子「献灯使」――未来主義の彼方へ
1 障害者的身体をめぐって
2 クィアな身体と反再生産的未来主義
3 献灯使という子ども騙し
4 可能性としてのケア
おわりに
初出一覧
あとがき
人名索引
事項索引
【著者】武内佳代(たけうち・かよ)
日本大学文理学部教授。専攻は近現代日本文学、クィア・フェミニズム批評。共編著に『〈少女マンガ〉ワンダーランド』(明治書院)、共著に『三島由紀夫小百科』(水声社)、『中央公論特別編集 彼女たちの三島由紀夫』(中央公論新社)、『〈戦後文学〉の現在形』(平凡社)など。
*版元HPより